2008.04.12(土) Perfume/資本主義  // Perfume + Cherryboy function - The endless polyrhythm lovers

[20080412]2007年はあまり音楽を聴けなかったので、『bounce』をかっぱらって'07リリース作品を振り返ってみたりした。ふと目についた記事でタワレコの社長がしゃべってたのだが、そのご仁、学生時代は京大西部講堂の自主管理に関わってたらしい。自己申告なので実際どの程度のことやってたかはわからんが。で、西武百貨店に就職、店舗計画をやっていたそうだ。この流れ、日本現代史における一つの典型という感じがする。
そのbounceの表紙は、マーズ・ヴォルタとパフューム。マーズヴォルタの新譜はたしかにかっちょいいんだけどまだ買ってないし、知人が熱い檄文をすでにものされているので、パフュームのことでもメモ。

Perfume(アクセントは「パ」)をはじめて聴いたのは、某素人ネットラジオ(土曜)で、2006年の11月頃だったようだ。曲は「エレクトロ・ワールド」、猛烈にあざとく、しかし、あるいはむしろだからこそ、けっこう気に入った。歌ってる女の子が音も作ってたらものすごい確信犯だな、などと妄想を膨らませていたのだが、チェックしようと思いつつ放置しているうちに、パフュームはアキバ系アイドルであるという情報をどこからか得て、いったん関心がしぼむ。その一方で、何かとパフュームの名を目にすることが少しずつ増えてくる。『クイック・ジャパン』の特集とか。ただしその時点では、クイックジャパンが盛り上がっているということは私にとってあまりプラスの印象にはならなかったような気がする。あんなもん広告代理店の出張先みたいなもんじゃ。いやほとんど読んだことないけど。また、たまたま見た某TV番組にパフュームが出演していたが、否応なくダフトパンクを連想させる「ポリリズム」(いやTwo Month Offか。でも、印象は全然違う気がするから、個人的にはパクリって感じもそんなにしない)があまりに短く編集されていて、ってそんなのテレビだから当たり前ですね。そして最近になって、某外資系CD屋の店内BGMで「エレクトロ・ワールド」を再び耳にする。ということで、『complete best』を入手。

「エレクトロ・ワールド」は、やはり非常にあざとい曲だった。アイドルっぽさが薄い曲であるぶん、余計にそんな感じがする(*というより、実は個人的にこういう曲も非常に好みだったってだけのことなんじゃないかという気もするが。だってかっこいいもん)。しかしそれは、手抜きとか受け手をバカにしているとかいうのとは多少異なる。まさにその“あざとさ”において、中田ヤスタカは本気だ。パフュームの活動歴における「エレクトロ〜」のリリース時期、および中田の発言を鑑みても、そう言っていいと思う。歌詞をいろいろ深読みしたりできなくもないが、そういうことをここで言いたいのではない。ではその、あざとさにおける本気とはなにか。J. M. ケインズの言葉を借りれば、血気、あるいはアニマル・スピリット。
剰余価値は、たんに労働時間を引き延ばすだけで得られるわけではない。それでは資本制と奴隷制の間にほとんど違いはない。ここで絶対的剰余価値の生産から相対的剰余価値の生産への議論の展開を想起することができるが、問題は、相対的剰余価値というよりは、(資本論においては相対的剰余価値をもたらす契機として、そして資本蓄積のダイナミクスを駆動する基本的メカニズムとしての位置づけが与えられている)特別剰余価値の生産、すなわちJ. A. シュンペーターのいうイノベーションである。イノベーションの訳としてときに用いられる「新結合」ということばはなんとなく語感がかっこいい気がするので好き、ということは脇には置いても、この「新結合」ということばは興味深い。イノベーションとは、ようするに新しいもの(新製品とか生産方法とか)を生み出すことだ。しかし、たとえば「新しいものは新結合によって生み出される」などという文は、ほとんど意味をなさない。「新しい」ものは「新」結合によって生み出される、だなんて、ほとんどトートロジーでしかない。そしてこのことは必然である。新しいものとして出現する何かを、そして新しいものを生み出す方法を事前に知ることはできないのだから(もしそうであるのならそれはすでに「新しく」ない)、新しいものを生み出すとは、不確実性の只中に飛び込むこと以外にありえない。そのような企業家の態度こそがアニマル・スピリットとよばれるだろう。確実に得られる利益なんて、そのうち消えてなくなるのは確実だ(… 往々にしてそうとも限らないが)。そしてこのことは、その実態において海賊とあまり区別がつかなかった遠隔地商業、すなわち商人資本的活動のそもそもの前提でもあった。

資本主義とは、欲望を吸い上げ・回路づけ・一方向に流す公理系である、と言われる。このことは、たんに消費者の欲望の話に尽きるのではない。資本主義がもたらした膨大な事物やシステムの変化に、ひとことで言って「資本」の「力」に驚嘆することを、「資本の力とはマルチチュードである」といいかえるとき,けっきょく人間がなんだかわけのわからないあれやこれやこんなことをやってるんだ、という了解がそこには入っているはずだ(そうでなければそれは、何でもかんでも「資本の論理」という決まり文句に還元するシニシズム=ペシミストぶった自己満足に対する批判にはなりえない)。ブルジョワジーはこれまでの時代がなし得なかった大事業をやってのけた、というわけである。リスクとリターンという論理が、ひとをわけわからんあれこれへと駆り立てる。それはたしかにギャンブルなのだが、どの馬がくるかといった予想にとどまることなく、あたかも自分の腕によって何ごとかを実現するかのような、自己成就的予言をその原理とするかのような形式を備えたギャンブルなのだ。資本という経済活動の形式の核には、論理的にそもそも公理化されえないミッションがある。あらゆる経済生活をそこに引きずり込み、労働を動員/動員解除する暴走的過程としての、産業資本。そこで駆動するのはたんに金銭欲ではなく、たんに支配欲でもない。おもしろいこと、今までにないことを現実化しようとする想像力。そして、スリルを必然的段階として通過する承認欲望が、競争的環境によって刺激され、また競争を加速する(そしてそのスリルがスリルであるためには、やはりこのギャンブルに現実の生活が賭けられていなければならない)。不確実な企てに身を投じるというアニマル・スピリットに明確なかたちを与えるからこそ、資本主義は欲望をそのガソリンとし、恐るべきダイナミズムを実現するのだ。だから、実存主義アンガージュマンは,決して近代を乗り越えることがない。「投企」とは資本家の行動原理そのものだから。

何の話かわからなくなってきたし、テキトーな思いつきのネタになんでここまで文字を費やしてるのかもよくわかんなくなってきたけど、いちおうまとめらしきところへ向かいたいのですが。当然ではあるが、ポップ・ミュージックの世界において、とくにアイドルなんかだと露骨にわかりやすいが、たとえば「Perfume」とはパフュームの個々のメンバーあるいはメンバー3人で構成されている集団のことではなく、ビジネスでいうプロジェクト、「企画」だ。いわゆる「企画もの」という意味ではなく。そこにはいろいろな人間たちが異なった立場から関わり、パフュームの3人を焦点としてタスクがまとめられていく。「売れなければ何をやっても意味がない」というビジネスの原理は、「売れれば何をやってもいい」に反転する。これは、後ろ向きにも前向きにも読める。どうせならおもしろいこと、おもしろい企画こそをやるべきだ。意図してうまくいくというのはなかなか難しい、といった話ではあったけれど(パフュームの一番おもしろそうな時期はぼちぼち終わりかなって気はしないでもない)。データベース型消費におもねるマーケティングなんぞ、資本主義以前の問題だ(?)。いまや音楽業界を経由せずとも、十分に観賞に堪えうる音楽を作ることができ、さらにそれを全世界に発信することを可能にするような技術的条件が普及しつつある。だいいちパフュームのプロモーションにしても、ファンが勝手にアップする動画に負うところが大きいだろうし(見事な職人技によってまとめられた,コンチネンタルパッションw的V!)。半端なものを垂れ流していたら、そのうちポップミュージックは本当にビジネスとして成立しなくなるかもしれない。少し言い方をかえてみよう。情報を集めたくなったので結局クイックジャパンのバックナンバーを買ったのだが、そこで「エレクトロ・ワールド」の歌詞が「絶望的」と形容されていた。さて、なんでそういうことになるのか。解釈を云々したいのではない。ここでは別の方向に折り曲げてみたいということだ。「この世界のしくみ」に「気づいてしまった」者たちは、「もうすぐ 消える エレクトロ・ワールド」を尻目に、静かに確信している。another world is possible.



(ええ、無理矢理ですとも)







(はじめは「ライブでリップシンクってのはちょっとなぁ」って思ってたんだが、本当に視野が狭かった。すまん。でも、できればもっと生で歌ってほしいです。あくまでこれは個人的趣味。
個人的趣味でいえば、PVでは「コンピューターシティ」が一番いいと思う。二番目はやっぱり「チョコレイト・ディスコ」で。
曲では「マカロニ」かな。くっそー中田ーくやしーこんなくらいの曲おれかて作るはずやったっちゅーに。歌詞は別として。
ともあれ単純接触効果は侮れない。いまいちルックスが、とか思ってたんだが。
そんなこんなで実は新譜にはわりと期待しています。[注: GAMEまだ出てない時点での話] )


・2008年02月15日 [04月12日コピペ&ちょっと修正]



さてはて

Perfume + Cherryboy function - The endless polyrhythm lovers
by tofubeats a.k.a. KGS