2008.03.14(金)Marx oltre Marx 各章要約 (9)

[20080314]つづきですよ。
いちおう、今回でラスト。
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というわけで第9講義「資本制的発展と革命的階級」です。ゴー!

 ここでの問題は、コミュニズムダイナミクス、資本制的発展の原動力および破壊要因としてのコミュニズムです。
 まず、移行の形態としてのコミュニズムの新たな叙述はどういったものかが検討されます。ここで資本制の危機は、枠組みを具体的に定める否定的な諸決定因です。敵対関係が発展すると、価値法則は力関係の総括、暴力性の表象となり、価値法則は「死滅」する。
 しかしこれは部分的な真理でしかない。これまでは、転回の運動のうちにコミュニズムへの移行に必要な力が秘められていると前提されてきた。例えば「プロレタリアの暴力」と呼ばれてきたそれも、現実の転倒を可能にする物質性のうえに組織されなければ無意味である。
 過程の「非決定性」は非常に重要である。階級構成や生産様式の変化を無限に追跡することや、危機や権力の拡張を客体的に定義することが問題なのではない。特にこの点でマルクスの叙述には限界があったが、その限界は乗り越えることが試みられていた。

 利潤カテゴリーについて見よう。それは剰余価値論と流通論の結合であり、流通の回路における搾取関係の膨張を述べている。資本は流通する価値であり、同時に関係でもあって、その関係の中で敵対的関係が発展するので、敵対的主体は流通全体、社会の全域に広がらずにはいない。(前進のためには、「成熟した革命的実践に頼るしかない」)
 では、敵対的関係の可能性はいつ現実になるのか。これは、搾取の質という問題になる。恐慌においては、資本は価値法則を押し付けることができず、資本制的関係は力関係に還元される。このとき、労働者は自らを主体化する。成熟した資本制的発展が危機に陥ることで、主体の出現が可能となる。

 マルクスの限界とは?ネグリによれば、剰余価値論と生産的流通の理論が隙間なく統合されているため、諸タームを完全に転位させることができない、という。一方で、8講などで述べたように、転位という操作、分離の論理に取り組んでもいた。またネグリは、労働者の組織化の立ち後れ、運動の未発達が理論のさらなる展開を妨げたとも考えている。コミュニズムの集団的個体性が構成される過程において、新たな叙述が自己叙述に自己転換しなければならない。
 また、マルクスは生産と再生産を緊密に接合するときでさえ、労働過程をその具体性において説明できていない。歴史的・具体的次元をみれば、生産的労働と再生産労働は、区別できなくなる。ここで過程の多様性があらわれる。これはコミュニズムを構築する一要素である。労働の概念を一回転位するだけで、革命的階級の定義が可能となっただろうとネグリはいう。

 問題は、自己価値増殖の過程の具体的な諸規定の探究である。労働の拒否=解放、協業の深化の分析。さて、資本は労働者の自律性の出現に気づいており(!)、これを労働者の観点から展開しなおすことは困難である。否定性だけでは不十分であり、肯定性、それ自身の発展を説明しなければならない。階級構成の多数性、欲動の豊かさ、協業の発展から引き出される多様なダイナミクス
 資本は、反乱を考慮に入れつつ、自身を絶えず作り変える。(労働者が「硬直的」であれば、政治的統制、力対力という事態になる)。これらは、次のことを指し示す。つまり、コミュニズムは、資本制発展の諸形態を先取りし、条件付ける。コミュニズムは資本制的発展の原動力であり、破壊する力である。

 修正主義者は、マルクスを「現代化」せよという。その通り、という他はない。しかしそれで十分か。諸カテゴリーの基礎づけ、社会的性格に注意を払わなければならない。社会化の理論と剰余価値論が統一されなければならない。ネグリによればそれは国家や多国籍企業の問題である。マルクス「国家を語ることは資本を語るもう一つの方法だ」。ネグリ「国家を語ることは資本を語る唯一の方法だ」権力のタームによる蓄積。価値論から指令の理論へ。「多国籍企業国家」(帝国?)。
 コミュニズムダイナミクスの分析(要綱)が、資本論を補完するだろう。資本論では、資本は生きた矛盾である。限界を設定し、限界を乗り越え、設定し、乗り越え・・・・しかしプロレタリアの観点では、限界は本来の意味で「障害」である。ゆえに、敵対的関係は弁証法ではない。コミュニズム的実践は資本を破壊し、そのことで自らを発展させ、豊かで自律した多数性を解放することができる。


とりあえず、最後までたどり着きました。まとまりのない要約でしたが、これはネグリのせいです。グチャグチャです、こいつの文体は。[…]
ともかく、少しでもみなさんの役にたてばありがたいです。一応全貌は見えたはずなので、色々意見を出し合ったらいいんじゃないかと思います。おつき合い下さって、お疲れ様でした。

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*「Marx oltre Marx 各章要約」は、 http://www.feecle.jp/blog/?b=anything&d=20080314 からの転載です