2008.07.29(火)だいぶ前、マルチチュード2 // Jon Spencer Blues Explosion - 2 Kindsa Love / Flavor

Jon Spencer Blues Explosion - 2 Kindsa Love / Flavor
on ABC's national, weekly morning youth program of the 90's, 'Recovery'



さてお話は変わって

[20080729]いわゆるレヴューその2

しかし、フランスえらいことになって。

マルチチュード』は言うまでもなく『帝国』の続編であり、基本的な議論に大きな変化があるわけではない。
ただし、副題にもあるように、「民主主義」という問題が大きく前景に出てきている点は特筆できる。

民主主義という言葉と今の世界の状況を突き合わせてみると、もうほとんどバカバカしくなってしまう。
本書の帯に引用されている文言(これが冒頭の一文だというのもすごい)に端的に現われているように、ネグリ=ハートは、そういう私みたいな輩を一蹴するわけだ。

新自由主義だとかグローバリゼーションだとかの虚飾がまるっきり剥がれ落ち、なおその流れにまったく抗えないようにみえる現状にあって、その現状を受け入れるにせよ拒絶するにせよ、はびこるのは反動的な政治路線ばかりである。
(古くさい言葉だ。しかしああいうのをそう呼ばずして何が反動的なんだ?)

現状がこのようなものだとすると、彼らが立てようと試みる問題、むしろそのような問題を“立てようと試みる”ことは、彼らが好んで用いるスピノザの言い回しを借りるならば、「絶対的」な意義をもっている、、、と書いてしまおう。

先述したように、本書で『帝国』における議論からの大きな飛躍があるわけではない。
つまり、「民主主義」という問題についても、もちろん明確な答えは期待すべきではなかろう。
しかし、少なくとも、「状況をこんな風に捉えることもできるんだ」ということを示している、この一点において、ただ頭の良いだけの本にはない価値がある。

ところで、この「マルチチュード」という訳語の選択に関して、訳者からの説明はもう必要ない、のでしょうか。
(「有象無象」というのが一番しっくりくるような気がするけど)
確かに訳語としては定着したんだろうけれど、『帝国』を読んでないひとがこの本を手にする可能性は当然あるだろうし、ましてやNHK出版は専門書しか出さないところにくらべれば間口は広いはず。

ついでに書いてしまうと、「民衆」という訳語も、もしかしたらありかなー、なんて。
peopleは「人民」、massは「大衆」と訳されてるし、いけるかも?
選挙のときなんかに撒き散らされる、「国民」の審判、みたいなアホらしい言葉に対抗して使いやすい、のでは??


・2005年11月11日 [2008年7月29日修正&コピペ]