2008.06.25(水)なんかいな文について // Alec Empire - We All Die!

[20080625] 、


あるいは


読むのに骨が折れる文章がある。文章のムズカシさの原因としては、だいたい次の2つを挙げておけばいいだろう(ということにしておく)。

1、そこで用いられている言葉が、狭いムラでしか通用しない
2、文章自体がむずかしい

2についてさっそく文句が出そうだが、順序で言えばまずは1から。
知らない者には意味のわからない、いわゆる専門用語が散りばめられている文章が専門外の人間にとって読みにくいのは、当然である。しかもタチの悪いことに、文章に専門用語が多用されているからといって、実際の内容がむずかしいものとは限らない。「ナントカ理論」などと言うとすごそうに見えてしまう。が、その中身が「自分はちがうと思っていてもつい周りの人に合わせてしまうこと」なんて話だとすれば、そんなことはお勉強しなくても、たいがいの人はよく知っている。
ここで、なんらかの用語を使って説明をおこなう、ということについて考えてみる。「この時期なぜ雨が多いのか」(a)という問に「梅雨だから」(b)と答えるとする。この答えは有意味だろうか。仮に、梅雨とは雨の多い時期である、と定義していたとすると、(a)に対して(b)で答えることは、答えになっていない。一言でいえば、トートロジーになってしまっているからである。しかし、回答(b)がトートロジーにはならない可能性もある。「梅雨だから」という答えによって、「6月頃に雨が多いのは例年のことであり、かなり堅固な規則性である。すなわち梅雨は、地球規模の気候の規則的な動きに組み込まれた現象である」(?)といった意味内容が含意されているかもしれないから。その場合は、より広い文脈に「梅雨」という概念を位置づけていることになるので、「梅雨」ということばを用いることが、そのような文脈(ここではマクロな気候の循環)をも引っぱり出してくれるのだ。
とくに求められてもいないのにもかかわらずもう一つの例を考えてみる。何か同じことがそれぞれ独立に、しかし同時に起こった時に、シンクロニシティということばで説明することは適切だろうか。さて、私はユング心理学のことはよく知らない。知らないがゆえに無責任にこの話を続けてみよう。仮に「何か同じことがそれぞれ独立に、しかし同時に起こること」を「シンクロニシティ」と定義したとする。この場合、先の話と同じことのくり返しだ。しかし、この概念が(以下略


じつはこの文章は、文章のむずかしさの原因について述べようとするものである。次に2つめについて。「文章自体がむずかしい」、これをたんなるトートロジーに終わらせないために、以下の叙述が試みられるであろう。
文章自体がむずかしい、とは? これまた2つの原因を考えることができる。

A、文章が混乱している
B、文章の内容がむずかしい

順序からいけば、まずはAについて。これもさらに2つに分けることができる。まず、文章がヘタクソな場合。そして,書き手の中で書きたいことがきちんとまとまっていない場合。ここにはたしかに差異がある。ただし、この差異はそれほど頑強ではない。考えをまとめるためには、ひとに教えたり、文章に書いてみたりすることが有効である。だから、文章の書き方が身についていない場合、思考がうまくまとまってくれない可能性がある。それゆえに、文章がヘタクソな場合、書きたいことがきちんとまとまらない、ということになりうる。もちろん、文章がうまいひとなのだが考えがまとまっていない、という事態はふつうに想定できるので、さしあたり2つを分離することは正当である。

そしてBである。文章の内容がむずかしいから文章がむずかしい、これは有意味な言明たり得るか。世界というものは(じつは)シンプルである、と考えるひとがいるだろう。あるいは、(世界の)表現はシンプルであるべきだ、と考えるひともいるだろう。他人が理解するためには、表現がシンプルである方がいいのは間違いない。一方で、ものごとというものは複雑だ、と考えるひとがいる。あるいは、表現は複雑にならざるを得ない、と考えるひとがいるだろう。世界が複雑なのであれば、それをシンプルに提示してしまうことは、誠実さを欠く行為かも知れない。
世の物事はややこしく入り組んでおり、それを着実に捕まえ、着実に表現しようとするならば、書かれる文章はややこしく入り組んだものになるだろう。しかも言語は世界の鏡ではなく、それ自身が世界の一部分である。そもそも世界を余すところなく表現するなどということはありえない。そうであるならば、複雑さをその複雑さのままに書き留めるとは一体なんなのか。けっきょく、書き手の書きたいことは未だまとまっていないのだ、ということになりはしないか。そんなわけで、私の頭の中はヤヴァいくらいクリアなのでこの文章もすっきりクリアなはずだと思っていたのだが、それも怪しくなる始末である。ただし、少なくとも一つ、事前に解消可能な、明らかに基本的な難点があったと言ってよい。ろくに知りもしない専門用語を振り回し、文章に無意味ななんかいさを付加してしまっているのだから。さて、シンクロニシティをググッてみるとしよう。



さてお話は変わりますが

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